新型インフルエンザ流行と肺炎球菌ワクチン


 CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が新型インフルエンザ流行期における肺炎球菌ワクチンの接種を推奨することを発表しました1)。また、わが国でも厚生労働省の意見交換会でも同様の提言がなされました2)

  新型インフルエンザは従来の季節性インフルエンザに比較して肺炎の合併率が高いのではないかと懸念されています。合併する肺炎の原因として純ウイルス性と細菌性が考えられますが、現状では96%が細菌性であると推測されています2)。一般に細菌性肺炎の起因菌としては肺炎球菌が一番多く、3〜4割を占めるといわております。インフルエンザに合併する肺炎は肺炎球菌とブドウ球菌によるものが多く、特に肺炎球菌によるものが大半を占めると推測されています。

 従来の季節性インフルエンザでは毎年1,000 〜 1,500 万人が感染し、1万〜1万5,000人が死亡されています。この死亡原因として正確な頻度は不明ですが、成人では細菌性肺炎が一番多いものと考えられています。つまり、肺炎を予防できたらインフルエンザによる死亡をかなり減少させることが可能だということです。

以下、肺炎球菌ワクチンについて紹介します。

1)肺炎球菌は90種類以上の型があるが、このワクチンは23種類の型をふくんでおり、ひとに肺炎をおこす型の8割をカバーしているといわれている。

2)肺炎球菌ワクチンの肺炎に対する予防効果は54−64%といわれている3)

3)0. ml を筋肉注射。副作用は局所の疼痛・熱感などがあるが、インフルエンザワクチンと同様で、2−3日で軽快。全身的な副作用はほとんどない。

4)接種後、抗体は1ヶ月後最高となり、4年間はほぼ不変。5年後に80%に低下する。しかし、効果はかなり個人差がある。

5)日本では接種は一生涯に1回のみ(欧米では数回可能)。

 接種時期は予約していただいたら1年中可能です。費用は公費助成がある市町村では無料なのですが(全国で15市町村しかない)、菊池市に公費助成はありません。脾臓を摘出されたかたは保険適応できますが、それ以外のかたは実費になります。当院では7,500円で接種しております。

 肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌以外の細菌による肺炎には有効ではありませんが、従来ペニシリンが有効であった肺炎球菌が近年、薬剤耐性化し約半数がペニシリンが効きにくくなっており4)、治療の難渋化も予想されます。

 新型インフルエンザの情報は日々変化していますが、慢性気管支炎などの基礎疾患を有している患者さんへの肺炎球菌ワクチン接種のすすめは変更ないものと確信しております。

                        平成21年9月17日

参考文献

1)        http://www.cdc.gov/h1n1flu/guidance/ppsv_h1n1.htm

2)       日本医事新報 445416 ? 19,  200

3)         一ノ瀬英史 : 市中肺炎予防で見落としていることはないか?.

      medicina 10 : 1871 ? 1873 , 2008 .

4)   石田 直 : 市中肺炎の治療指針 . 内科 11 : 842 ? 846 , 2005 ..