耐性マイコプラズマ感染症


 マイコプラズマはウイルスではなく細菌の仲間で、学童に風邪症候群をひきおこす、よくある病原体です。5歳から14歳に多いといわれますが、家族内感染がみられ、成人にも感染します。一般にマイコプラズマ感染者は大半が通常の風邪症候群の症状を呈しますが、長引く咳を引き起こし、最近、喘息の原因としても考えられています。感染者の3〜5%が肺炎に進展するといわれています。

マイコプラズマに有効な抗生剤は数種類ありますが、通常、マクロライドという抗生剤で治療されます。このマクロライドに耐性(効かなくなった)になったのが耐性マイコプラズマです。その頻度は一般外来で15%。入院症例では50%と報告されています1)。耐性マイコプラズマの分離例は大半が小児例で、最年長例は現在わが国では18歳です1)

耐性マイコプラズマは実験室において通常のマイコプラズマに比べて明らかに増殖がゆるやかではありますが、人間に感染した場合、その毒力が弱いのかどうかはまだわかっていません。

耐性マイコプラズマ感染をマクロライドで治療したらどういう結果になるでしょうか?解熱日数が2日のびるが、平均4日で解熱する1)、なかなか解熱せず咳もよくならない2)、有効率14.3%で抗生剤変更を余儀なくされた3)、などいろいろな報告がなされています。

マイコプラズマは培養が難しく、抗生剤の感受性(効くか効かないか?)を確かめてから治療を開始することは不可能です。私たち医師はマイコプラズマを臨床診断、もしくは血液診断を加えて治療を開始いたします。

ではマイコプラズマ感染と診断したら、まずどういう抗生剤で治療を開始したらよいのでしょうか?。

耐性マイコプラズマかもしれないが、マクロライドで治療開始するのが基本と考えられます。

その理由を以下に書きます。

1.マクロライド以外でマイコプラズマに有効な抗生剤は、小児には使いづらい〜使えないものであるため。

2.マイコプラズマ感染の発症には菌自体の毒力より、患者の免疫反応が関与していると考えられているから。つまり、症状がよくなった患者さんの咽頭からは、マイコプラズマがしばしば検出され、必ずしも菌を徹底的に退治しなくても症状がよくなるということ。

3.2にも関連することですが、マクロライド抗生剤が抗菌剤として効く以外に、免疫調整剤として効いている可能性もあること。

 以上の点からマクロライドで治療開始することが現状では基本と考えられます。しかし、慎重に経過を観察することは言うまでもないことです。

 耐性マイコプラズマの報告はわが国を中心になされており、わが国の抗生剤の多用に関係した現象と推測され、今後も、動向に注意が必要と思われます。

                        平成21年8月3日


参考文献

1)成田 光生:マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎. 感染症誌
83増刊号:125,   2009.

2).山口 恵三、他:マイコプラズマ肺炎. 感染症 先端医学社:144-145, 2008

3)変貌するマイコプラズマ感染症

 http://radio848.rsjp.net/abbott/html/20061201.html