Q熱とは?


 Q熱は重要な人獣共通感染症で、病原体はCoxiella burnetii というリケッチア科の小桿菌であります。本菌は広く家畜や愛玩動物に寄生し、これらの動物は無症状であることが多いのですが、尿・糞・乳汁などに排出され、環境を汚染します。また、本菌は乾燥に強く、エアゾルとなり広く大気に散布され、それを吸入した人は感染します。とくに動物の胎盤に濃厚に感染し、動物の出産にたちあった人への集団感染の報告が多く見られます。

感染症状は急性型と慢性型がありますが、多くは、インフルエンザ様の急性呼吸器感染症型であります。しかし、その症状は多彩で、消化器症状を主とするものや、肝炎症状を主とするものなど、一定しないのが実情であります。そして、慢性化すると治療が難しく、倦怠感、不眠、関節痛などの不定の慢性症状となることが報告されています。慢性疲労症候群の原因のひとつとして重要視されています。

Q熱は診断しにくい病気であることが感染症の教科書にはよく記載されています。その原因として、症状、所見が多彩で一定したものがなく、保菌動物が多彩、かつ、無症状で、エアゾルとなり広く飛散し、原因が類推しにくいというところにあります。また、Q熱は国内のごく限られた研究所でしか診断できず、実際の感染の拡がりは不明な部分が多いのであります。

最近、国内でもQ熱の研究が行われるようになりました。国内のQ熱肺炎の頻度は岡山や千葉などの報告では、市中肺炎の1−2%程度を占めており、欧米の報告と一致しています。また肺炎以外の病系(肝炎、不明熱、リンパ節炎など)についての調査はなされておらず、その発症頻度は不明であります。

以上、Q熱はなぞだらけの感染症でありますが、日本にも確実に存在している感染症であり、初期に見逃し慢性化すると治療がむつかしくなる可能性があり、感染症を疑わせる患者さんでは忘れてはいけない疾患であります。なお、残念ながら、当院での確定診断は不可能ですが、疑わしい患者さんには、テトラサイクリン系の抗生剤で治療可能です。                                  

2009年1月4日

参考文献

高橋 洋:国内におけるQ熱の現状と将来展望. 感染症誌. 2008 ; 82 suppl : 126-7.

渡辺 彰, 高橋 洋 : 人獣共通感染症. Q. 内科学会誌. 2007 ; 96 : 2406-12.