南ア、はしか流行中!


 

サッカーワールドカップ(W)が開催されている南アフリカでは昨年以降、はしかの流行が続いており、W杯で現地に行かれるかたではしかにかかったことのないひとやワクチン未接種のひとはワクチン接種をすすめることが報道されました(2010年6月14日:共同通信社)。

意外に思われるかたが多いかもしれませんが、はしか(麻疹)はアメリカや欧州などの先進国ではワクチンの普及とともにその発生はほとんどみられませんが、アジアやアフリカなどの開発途上国では今なお流行している重症感染症で世界中では毎年約2000万人がはしかにかかり、肺炎や脳炎を合併し35万人以上が死亡していると推計されています1)。このような国に渡航される場合、普遍的に存在する感染症としてはしかを念頭においておく必要があります。はしかに対する免疫は血液検査でわかります(当院ホームページ感染症外来参照)。     

麻疹ワクチンは渡航1週間以上前に接種してください。また、過去に麻疹ワクチンを接種したことのないかたは2回接種する必要があります。また、麻疹ワクチンを接種しても5%ぐらいに抗体価が陽性化しないひとがでてきますが、再接種で大半が陽性になります。

さて、外国では私たちが忘れてしまった感染症、いまだ遭遇したことがない感染症が流行していることがあります。南アフリカでははしかのほか、A型肝炎やインフルエンザ、狂犬病、結核、AIDSなどに注意が必要です。このような情報は海外旅行者のための感染症情報2)ですぐ知ることができます。また、渡航時のワクチン(トラベラーズワクチン)の情報サイト3)も豊富なので海外旅行の際は是非情報収集を怠らないようにしてください。ちなみに、ワクチンの効果は1ヶ月ぐらいを要する場合が多く、早めの準備が必要です。

また、地球温暖化の影響か、熱帯〜亜熱帯地方の感染症が少しづつ拡がっている傾向もあります。デング熱がその代表です。デング熱はデングウイルス感染によって引き起こされる感染症で、蚊によって媒介され拡がっていきます。世界中で年間数千万人が感染し、そのうち数%が重症化しているものと推測されます。もともと東南アジアやアフリカで流行する感染症ですが、発展途上国なので正確な感染情報が乏しいのが実態です。しかし、この感染症の流行地域が地球温暖化の影響で少しづつ温帯地方にも拡がっていることが報告されています4)。つまり、予想外な外国でこの感染症に遭遇することもありうるということであり、デング熱感染症の知識がない日本人には診断が難しいかもしれません。デング熱の予防は残念ながら蚊にさされないことだけです。治療法もとくにありません。

感染症は時代の移り変わりとともに姿を変えて変化しており、われわれ医療従事者は正確な情報収集が必要であると考えています。                    

                    平成22年6月24日

参考文献
1)岡部 信彦ら : 予防接種に関するQ&A集 . 第5版, 細菌製剤協会, 東京, 2009.
2)厚生労働省検疫所 海外で健康にお過ごしいただくための情報サイト
http://www.forth.go.jp/
3)トラベラーズワクチンーどう接種すればよいか:    
http://medical.radionikkei.jp/abbott/final/pdf/041217.pdf

4)只野 昌之:デング熱
. 日内会誌 . 2007 ; 96 ; 47 - 52 .

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