胸部領域
◎ 肺炎

◎肺胞性肺炎と気管支肺炎
 肺は約100〜200μmの大きさの肺胞という単位でできています(左上図参照)。この中は通常、気体がありガス交換が行われているのですが、肺炎ではこの中に炎症性浮腫液とよばれる液体が充満します。炎症性浮腫液はKohn孔(肺胞―肺胞間孔)などの穴をぬけて隣の肺胞に広がります。  
  肺炎は形態的に肺胞性肺炎(CT画像左)と気管支肺炎(CT画像右)に区別されます。炎症性浮腫液の粘性が低く、どんどんと広がっていくのが肺胞性肺炎です。反対に最も強い炎症があるのが気道(気管支や細気管支)で、炎症性浮腫液の粘性が高く、広がりが制限されているのが気管支肺炎です。
 どんどんと肺全体に広がっていく肺胞性肺炎と、気管支の周囲に円形にとどまる気管支肺炎の違いがわかると思います。肺胞性肺炎を起こしやすいのは、肺炎球菌肺炎とクレブシエラ肺炎が有名ですが、残念ながらこれだけで起因菌の同定はできません。しかし病態を理解することは、患者の症状を理解するのに役立ちます。
◎ 肺気腫
 肺は肺胞と呼ばれる無数の小さな空気の袋が集まってできている臓器です。その中を空気の通り道である気管支が樹木の枝のように走っています。
 肺気腫とはその肺胞の壁が長い年月をかけて徐々に壊れてゆく病気です。そのため、肺胞としての働きを失った空気のたまり場が肺のいたるところにできてきます。肺は全体として弾力のない伸びきったゴム風船のようになり、勢いよく空気を吐き出そうとしても思うようにいきません
 この病気は長期にわたる喫煙が一番の原因です。例えば1日20本以上喫煙を続けていると7人に1人あるいは15%くらいの人が息切れのある肺気腫になると言われています。
 病気の進行とともにこの息切れは徐々に悪くなり、ひどくなると、日常のちょっとした体の動きですらつらくなります
◎ 胸水

 胸水とは胸腔内に体液がが異常に溜まった状態です。胸腔内には平常でも10〜20mlの胸水が潤滑油的な働きをしています。 ガンによる胸水は、主に肺ガン、乳ガン、リンパ腫、卵巣ガンなどで起こります。また腹水が横隔膜を通っているリンパ管から胸腔内に移動するケースもあります。 ガンや肺炎などによって引き起こされる炎症(胸膜炎)によって体液が滲出します。ガンが胸膜に浸潤して毛細血管の損傷によるタンパクの漏出、肺のリンパ管損傷によって胸水が吸収されないことで胸水が溜まります。他にはうっ血性心不全により肺静脈圧が上昇して血管か水分が漏出するケースなどがあります。 腹水に比べると、胸水は外見上わかりにくいです。胸水の量が増えてくると、呼吸困難、空咳、胸の痛みが現れることもあります。